自分の中の変化

 

「お前、高校生にカツアゲされたんだって?」

 

 

そう言いながら私の目の前でおかしそうにクスクスと笑っているのは大地君。

 

久しぶりに大地君と居酒屋に飲みにきてみれば誰に聞いたかその話題。

 

まぁ一人しかいないか。

 

 

 

「純平に聞いたんでしょ。てか高校生じゃないし、カツアゲでもないから」

 

「返してもらえたのか?」

 

「うん、ちゃんと返してもらえたよ」

 

 

…半額だけど。

 

 

「そっか。ならよかったな」

 

「あ、そうそう。結婚式の写真見たよ。二次会のやつだけどね。春菜先輩、相変わらず綺麗だった」

 

 

「ドレス姿はヤバいくらい綺麗だったな」

 

「また惚れた?」

 

 

「いや。さすが俺の惚れた女だと思った」

 

「プッ、ハハハ」

 

 

 

あんなにも名前を出しにくかった春菜先輩や海の名前を今ではサラッと言えて、冗談まで言い合える。

 

 

春菜先輩も海も心の中にはずっといる。

 

 

だけど、

 

心の痛まないところに二人は定着したんだ。

 

「ところで大地君、最近忙しそうだね」

 

「最近というか、俺はいつでも忙しいんだよ」

 

 

澄ました顔で言う大地君は生ビールのジョッキを持ち上げて、浮かび上がってくる気泡を見つめる。

 

 

 

「そんなじゃ恋愛もできたもんじゃないね」

 

大地君は「まぁな」と言って、ビールを喉に流し込んだ。

 

 

 

「未来とはどうなの?」

 

 

私が幾度となく口にする“未来”大地君は“またか”といった様子で表情を変えた。

 

 

「お前、そのネタしつこい」

 

「だって他にネタがないもん」

 

 

私と大地君の間には特に盛り上がる話題もなくて、最終的にはいつも“未来ネタ”になるのがお決まりパターンだった。

 

 

 

「先週、飯食った」

 

「未来と二人で?」

 

 

「おぅ」

 

「いい感じなんだね」

 

 

少しだけ冷やかすような口振りをしたら大地君は冷静に返してきた。

 

 

「だったら、お前と俺も“いい感じ”ってことだな」

 

「は?」

 

 

「普通にツレと飯食うだけなのに、なんで“いい感じ”になんだよ?」

 

「だけど…未来は大地君のこと友達と思ってないよ?それぐらい大地君だってわかってるでしょ?」

 

 

 

上手くいけばいいのに…

 

と、思う二人なのにそうもいかないのが友達の上にある男女の仲なんだろう。

 

 

 

「俺、お前に何回言ったっけ?」

 

「何を?」

 

 

とぼけてみたけど何回も何十回も聞かされていることを忘れるはずもない。

 

 

 

「未来はツレ。それ以上でもなければそれ以下でもない」

 

 

次、大地君が口にすることを頭の中に出した。

 

“女(恋愛対象)として見れない”

 

 

 

「だから、女として見れない」

 

 

 

ほらね。

 

決まりきった会話のパターンにいつもの流れ。

 

大地君のセリフも身に染み込んでいた。

 

 

 

「ねぇ大地君のタイプって、どんな女の子?…って前に聞いたっけ?」

 

「聞かれたような聞かれないような。覚えてねーよ」

 

 

「じゃあ新たに教えて」

 

「お前がそんなの聞いてどーすんだよ?」

 

 

「未来に密告」

 

「くだらね。だいたい宣言したら密告にならねぇだろ」

 

 

「いいから、一応教えてよ」

 

「意味ないだろ」

 

 

「いいからいいから教えて」

 

 

テーブル越しに前のめりになる私の目が興味本位に輝く。

 

そのわけは、未来を少しでも大地君の理想に近づけて後押ししたいから。

 

 

 

興味本位であれこれと探る行為はキライなはずなのに。
もう恋愛事なんて興味なかったはずなのに。

 

人の恋愛にまで目を向けようとするなんて……やっぱり自分の中で何か変化があったからなのかな。